上虚下実 安定した身体と自由な心
上虚下実(じょうきょかじつ)。
上は虚(広さがあり、無限)、
下は実(実態があり、有限である)ということ。
つまり、上半身からは余計な力みが抜けていて、
おなかや腰あたりの下半身に力が充満している状態のことです。
東洋医学や武道、ヨガなどで使われる言葉なのですが、
この”上虚下実”の状態が保てると、身体も疲れにくくなりますし、
乱れやすい自分の心をコントロールするのも楽に感じられます。
気が上がっている=キレれやすい私
人が怒りを感じたときの表現として、
「頭にきた」とか「血がのぼる」とか言いますよね。
気が上に上がっている状態です。
反対に、
「肝が据わっている」というのは、
気がおなかのあたりに落ちて、落ち着いてどっしりした状態です。
現代に生きる私たちは、頭ばかりを使いがちで、
気が上にあがりっぱなしの状態です。
このようなアンバランスな状態だと、
人間は自分本来の力を発揮できないと言われています。
上虚下実の状態では、
上半身はリラックスしていて、肩の力が抜けている、
下半身は力を入れて引き締めて、背筋が伸びている。
これが理想の姿です。
一流の武道家の姿勢は、この上虚下実です。
”キレる”というのは、この上虚下実と反対で、
気が上に上がった状態です。
インターネットによって、すべてのものが超スピード化し、
私たち人間の思考も、じっくり深く考えることなく、
何かが起こると、衝動的&瞬間的な反応によって、
思考から行動まで結びつけてしまう場合が多くなっています。
これが、”キレる””ということですよね。
一方で、安定した下半身と、広がりを持った上半身を保っていると、
外界から入った情報を、いったん受け止め、深く洞察し、
自分なりに咀嚼した上で、発信していくことができるようになります。
ヨガでも、安定した下半身を作り、
そのうえで、上体は軽やかに保っていく練習をします。
これが、身体だけでなく、心にもつながっていくのだと思います。
まずは腹式呼吸
この上虚下実の状態を作っていくには、
私はまずは腹式呼吸が有効だなと思います。
丹田(おへその下あたり)に呼吸を入れていくこと。
気が上がっている時は、呼吸が浅く、
胸の上のほうだけで呼吸をしていることが多いので、
おなかを膨らませるように、ゆっくりと呼吸をしていく。
これだけで、かなり身体も心も安定してくるのが
感じられるのではないでしょうか。
ヨガをやっていると、
自分が”一本の木”になったような気持ちになることがあります。
足は地面に深く下ろした根のようで、大地のエネルギーをもらって堂々と立ち、
上半身は根から伸びる幹、手は空間に大きく広がる枝葉。
根はどっしりとしているけれども、
枝葉は、気持ちの良い風に吹かれて、そよそよと自由にしている。
そんなイメージが広がって、
自分の身体が、自然界に生きて生命力溢れる樹木と同じように感じられます。
ヨガのその感覚を、日常でも思い出すようにしています。
強い自分と、柔らかく広がる自分。
そうすると、自分の外側でどんなことが起こっても、
どっしりと受け止められるようになっている自分を感じられると思います。